一人でできる事の限界

浜松の造園屋ふなこし

2008年03月01日 19:15

ついに20巻を数えたローマ人の物語ですが、

この「悪名高き皇帝たち」シリーズも、いよいよ最後になりました。

ローマ帝国史上最狂最悪の皇帝と評される【ネロ】の登場です。


シリーズを通して作者が言いたかった事は何だろうか?

と愚考してみると、ひとつのキーワードが見えてくる気がします。

それは、「捏造と誤解」です。


2~5代の皇帝すべての資料を丁寧に読み解いただけではなく

その参考資料が成立した経緯や時代背景、果ては資料を作った人物の

性格と生活レベルにまで思いを馳せて、

「悪名高き皇帝たち」を可能な限りニュートラルに読者へ伝えようとするその姿勢は

尊敬できます。


彼らは、言われているほど悪い奴らじゃなかった。

でも、ヤッパリ人間なんだから欠落しているところもあった。

その欠けているところがコミュニケーション能力で、とりわけ、

最高権力者として自分に従う人々への本音的な、建前的なコミュニケーション能力の欠落

が、彼らの評価を悪帝へと導いた最大の原因だったのではないか?

そう思わずにはいられません。


・全ての事を一人で行う
・全ての人から賞賛される
・全ての行動が正しく行われる

不可能ですし、主観によって正義は変わります。


報道、と呼んで良いのかどうか理解に苦しむほどに装飾されたニュースが

TVの画面を通して毎日ワタシたちに送られてきています。

起こった事象そのものを見つめ、

その背景を考え、

自らの倫理観や価値観に照らし合わせて、

評価、決断、行動していく。


そんな人間になるために、今この瞬間も精進を続けていて

軽はずみな発言はしないように再確認しなければいけないと

改めて誓った本でした。


感謝。


ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)


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