一人でできる事の限界
ついに20巻を数えたローマ人の物語ですが、
この「悪名高き皇帝たち」シリーズも、いよいよ最後になりました。
ローマ帝国史上最狂最悪の皇帝と評される【ネロ】の登場です。
シリーズを通して作者が言いたかった事は何だろうか?
と愚考してみると、ひとつのキーワードが見えてくる気がします。
それは、「捏造と誤解」です。
2~5代の皇帝すべての資料を丁寧に読み解いただけではなく
その参考資料が成立した経緯や時代背景、果ては資料を作った人物の
性格と生活レベルにまで思いを馳せて、
「悪名高き皇帝たち」を可能な限りニュートラルに読者へ伝えようとするその姿勢は
尊敬できます。
彼らは、言われているほど悪い奴らじゃなかった。
でも、ヤッパリ人間なんだから欠落しているところもあった。
その欠けているところがコミュニケーション能力で、とりわけ、
最高権力者として自分に従う人々への本音的な、建前的なコミュニケーション能力の欠落
が、彼らの評価を悪帝へと導いた最大の原因だったのではないか?
そう思わずにはいられません。
・全ての事を一人で行う
・全ての人から賞賛される
・全ての行動が正しく行われる
不可能ですし、主観によって正義は変わります。
報道、と呼んで良いのかどうか理解に苦しむほどに装飾されたニュースが
TVの画面を通して毎日ワタシたちに送られてきています。
起こった事象そのものを見つめ、
その背景を考え、
自らの倫理観や価値観に照らし合わせて、
評価、決断、行動していく。
そんな人間になるために、今この瞬間も精進を続けていて
軽はずみな発言はしないように再確認しなければいけないと
改めて誓った本でした。
感謝。
ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)
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