読破本の紹介11

浜松の造園屋ふなこし

2006年06月06日 17:36

画一化されたシステムは、組織の内部においてのみ発揮されている時は、効率的であり非常に強力なものですが、ひとたび外部に(しかも敵意を抱いている外部に)さらけ出されると、こんなに脆いものは無いのではないでしょうか?

第1次ポエニ戦役(ローマとカルタゴの最初の戦争)の雪辱に燃える、若きカルタゴの智将ハンニバルは、ローマの硬直したシステムを突き、大勝に大勝を重ねます。

峻険なアルプスを越え、イタリア半島内、つまりローマ国内で暴れまくるハンニバルの意図は明らかで、大きく分けて【直轄地】と【同盟国】からなるローマの国家形態を利用し、イタリア半島内に散在する同盟国の離反を促すのがハンニバルの目的であったと作者は語ります。

盟主ローマの、「責任」というキーワードに重きを置いたシステムの真価が問われます。

そしてローマは、剣を交えた戦争に敗れ続けながらも、この目に見えない戦争に勝利します。

何年にも渡りイタリア半島で暴れ続けるハンニバルは、結局同盟国の離反を得られず、次第に孤立していきます。

それは、

・ 責任に基づく信義を愚直に守る
・ インフラ整備により実現した爆発的な交流

が行なわれ続けた事が重要であり、

・ 信義を守り続けられる国家の体力
・ 同盟諸国責任者の深い読み

がもたらした、まさにローマ型システムの勝利ではなかったかと思います。

グローバル社会といわれる昨今ですが、遠い昔の遠い国で守り続けられた信義に敬意を表したいです。


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ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中) 新潮文庫

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